異文化交流術 「足し算」の西洋文化、「引き算」の日本の文化

2009年10月28日 / 伊東国際交流協会 / 得丸公明(久文)

1 文化は見えない
  1. 文化は目に見えない:
    文化は「人が後天的に個体獲得するよく生きるための知恵や技のソフトウエア(OSからアプリまで) 」。意識上に構築され、我々の心の型・身体技法を決定。一身従属。「手に職をつけろ」の職は文化。人は見かけによらない。「宇宙の法則に従って正しく生きる」が大切。

    • 言語(挨拶、言葉づかい、敬語、気の利いたこと、敬語の乱れ)
    • 生業(農業、漁業、林業、工芸、商売、「手に職」をつけるは死語化)
    • 生活(さしすせそ 裁縫、躾、炊事、洗濯、掃除の嫁入り「修行」は死語化)
    • 芸術(歌や踊り、詩歌、芸能、娯楽、宗教的行事、政治過程(ハラ芸)、神と一体化)
    • DNA遺伝子の記憶と法則により宇宙の真理ともする直結。犯罪や戦争は文化でない。
  2. 文明との違い:文明は時空間環境で縛る概念。外から与えられる。「文明の利器」
    古代エジプト、江戸徳川、中国、近代、現代、地球「文明」
    文化は、個人が担い手。
    時代・主要作物/道具/思想によって規定することあるが、あくまで人間の意識上に構築する・考え方や生き方;鎌倉、安土桃山、上方、仏教、日本(空間よりはむしろ日本人という意味。ガイジンが武道する)、児童、若者、土器、鉄器、照葉樹
  3. 動物とは隔絶、ヒトは皆共通。:ヒトの崇高さが文化
    • ハダカデバネズミにも敬語はある、「芋を洗うサル」:生きていく知恵はヒトに限らない。
    • 本能(類的記憶Phyletic Memory)の反対概念。基本は霊長類に固有な「サル智恵」。本能は変化対応に弱いので、生後に個体を教育する。だが「サル智恵」を超える真理がある
    • 後天的だが天与の才あり、またLAD(言語獲得装置)など生得の部分が根っこにある。
    • 気候風土や環境・地霊などによって文化は固有の発展をとげる。しかし、個人が望めば外国の文化も学べる。例:日本にフラメンコ教室、フラダンス教室たくさんある。
  4. 異文化はさらに見えない:そもそも接触がない。知る必要のないもの。付き合う必要のない相手。コトバも通じないし接触があっても交流しない。盲点、真逆・虚部にある。
    自分と違うやり方だから目の前で見ても目に入らない・耳に聞こえない。
    パソコンでいうとWindowsとMacのようにOSが違う例に近い。
    同じエクセルやワードのソフトが走っているのに、ファイルが使えない、互換性がない。

    • つり銭の数え方:モノの値段を口に出してから、小銭を唱えながら並べていく。
    • 引き算を繰り上がりで計算:引かれる数と引く数に平等に1足す。
    • イスラエル・ホロヴィッツのThe Indian Wants the Bronx サンキュしかしゃべれないインド人がサンキュと叫びながら殺されていく話。異文化交流失敗例の劇。

2 異文化との対話:関係性を結ぶ必要のある人は多くない。支配・対等・従属/依存
  1. 異文化との関係性:
    • 支配:攻撃・占領 ベネディクト「菊と刀」。第二次大戦後の文化人類学は戦争中の情報収集活動の人材救済だった。
    • 対等:合理的関係・お互いが満足できるビジネスを誘導。「双方代理」をしている商社:日商岩井「英語は度胸」・「英語は愛嬌」、トレードピア、好奇心・子ども心が大切)
    • 従属/依存:おもねる・こびる技 (奴隷根性はよくない)
  2. 異文化ははじめ違和感として現れる
    • 同じ(似ている)・違う:ともに自分の文化の記憶に照らしての評価(相対的)。「日本だったらこうだったろう」と驚きや意外性として認識される。似てもおらず、違ってもいないものは、見えてこない。心の接点がない。
    • コトバの意味が通じない。:子どもがコトバを覚えていくように、苦労しながら、ひとつひとつ生活の場(買い物、病院、学校など)で使われているコトバを覚えるしかない。(例)フランスの中華料理屋で注文すると、一人に一皿ずつ出る。一度の全部出してもらうためには、「同時に出して」と言わなければならない。
  3. 異文化と自文化の対比・対照がだんだん一般化されて、ツール化する。足し算・引き算
    • 西洋:個人主義、成果主義、デカルト的合理主義(Cartesian)、功利主義、理、その場かぎり、足し算、単純、自己中心的。狩猟民族。懺悔が日常文化に。
    • 日本:集団主義、減点主義、場の空気・和(輪)を乱さない、損得計算しない・考えないで感じ取る(もののあはれ)、人情・仁義、長期多角決済、引き算、複雑、気配を読む。
  4. 異文化によって自文化がみえてくる。はじめて自分を知ることになる
    日本という特殊な風土:引き算のほうが高度(全体についての知識・配慮が必要)
    例:俳句がなぜ17音節で感動を共有できるか?全体のイメージが見えるから。さらに季語辞典まで作って「朝顔につるべとられてもらい水」「閑かさや岩にしみいる蝉の声」

    • 音節文字が2セット(カタカナ漢文音読用、ひらがなは万葉仮名簡略化) 1200年前からある。これが日本人の高い識字率と、詩歌愛好人口の多さの背景にある。言霊信仰。いずれか歌を詠まざりける。
    • 詩歌には右脳を使うという。オノマトペは、自然もコトバを話すことへの敬意。意識の中に自然に耳を傾けることを植え込む。(コトバはデジタル。デジタル処理回路に、表面上はアナログなコトバを流す)。日本語は声が低い。自然の音、虫や鳥の声に遠慮。
    • 近松心中物語やテレビドラマでも心中大好き:死ぬときは一緒。落ちていく物語に安心?
    • のこぎりやかんなも引く。玄関のドアも引く。七味の竹筒。イギリス人「どうやって使うの?」考えてみて「これ?」(竹ひごを指す)、そうだよというと、グイグイ押し込んだ。
    • いくらでも例は出てくる。こじつけもありえるが?
    • 一方、政党対立は日本の文化になじまない。しこりができる。ついつい争いに心を奪われる。小選挙区制は失敗、むしろ料亭政治(ハラを割る)や大政翼賛会がいい成果を生む風土。
3 異文化との付き合い方
  1. カメレオン型 表面上だけ相手に合わせておく
    • 福沢諭吉は、「西洋はすべて反対だと思えばいい」といった。「英語でしゃべるときは名前・苗字の順番を入れ替える」と覚える。表層のコンバーター。日本人同士は苗字で呼ぶのに、外国人には名前で呼ばせる。外人には同じ文化に見え安心。条約改正を急いでいた明治政府がとった策。ファースト・ネームが日欧で違うとは教えない。英語で姓名の語順の名刺、総務に「どうして反対にするの?」と聞かれた。
  2. 相手のルール:異文化の法則性を身につける、相手の心を読む
    最初は真似するのも楽しい:フランス人の食へのこだわり、いいかげんな運転・駐車、徹底的な個人主義(私的なことを詮索しない)、対話にならない自己主張

    • レストランのメニュー構築、幼児がアイスクリーム3種類とトッピングを選ぶ。
    • 破廉恥なパーキングぶつからない限り(大きく凹まない限り)何をやっても許される駐車
    • 非常に型にはまった電話の応答(Ne quittez pasそのままお待ちください)、フルコース(食前酒・前菜・メイン・チーズ・デザート・食後酒)

    目には目を・同じ穴のむじな方式:激しい自己主張をする。人に気遣いせず、相手と同じやり方をする。家の中で靴を脱がせるのは容易だが、外でどうするかは難しい。
    これは日本人としてやや恥ずかしい。相手も日本人には同じルールを認めない傾向あり。勝負になるので、勝つこともあれば負けることもある。効率よくない。

  3. 東洋的英知・人類文化の共通性への信頼:
    • 東洋的喝:ひとこと短く、問いの形で「喝!」を入れる。「なぜ○○なのだ」後は相手に考えさせる。(例)視界が悪くなると助手席に座らせない運転手にPourquoi le siege?
    • 移項 相手の考え方と日本流の考え方は同じところに行き着くという信念にもとづき、相手が期待する答えを出せるように導く。(例)「あなた方だって、そういうことをするでしょ。そのときはどう社内を説得するのですか」
4 人類の文化はひとつ、言語はひとつ。
(以下、読書会「鷹揚の会」のホームページに人類と言語の起源についての記事がアップされていますのでご覧下さい)
oyonokai.karakuri-nendo-yuenchi.com